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日本式ソーシャルレンディングとは

米国でのマイクロファイナンス、あるいはソーシャルレンディングが一つには銀行(営利目的)という形で行われていることはすでに述べました。また営利ではなく、非営利の団体(NPO)として活動しているものもあることはプロスパー社の事例などを用いて説明しました。日本では、営利でこうした活動を行っているものがわずかではありますが存在します。それについては後述することにして、非営利というあり方でマイクロファイナンスやツーシャルレンディングを行うことの是非について少し考えてみたいと思います。まず「是」とする意見ですが、これは以下に要約できるでしょう。

一 営利目的よりも非営利のほうがより多くの人を助けることができる
二 実際に、ろうきんとか公的金融機関が、それに近いことを行っている
三 営利目的で行うと取り立てが厳しくなったり、金利が高くなったりする弊害が生じる
四 非営利で行うほうが社員の倫理やモティペーションを高く保つことができるなど

確かにもっともです。特に一の「より多くの人」を対象とできること、三の「取り立ては甘く、金利を低くする」ためにはNPOのほうが向いているような感じがします。しかし、二の「公的機関がすでに行っている」とか四の「社員の倫理性、動機付けの点で優れている」というのはどうでしょう。私はこの論には必ずしも賛成できません。民間の銀行が貸し渋り、貸し剥がしを行う中、旧・国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫国民生活事業部)などの公的金融機関は、銀行が貸さない先にもおカネを貸していることは事実です。この点では民を補うという役割をキチンと果たしています。しかし、失業した人への生活資金の貸出や破綻した中小企業の再生などについてはどうでしょう。

いろいろと制約があり、希望するほど期待に応えることができていないようです。先ほどと真逆の論理ですが、理がないことはありません。官主導、半官半民の組織の非効率さについては改めて言及することもないほどです。その点では、営利目的のほうが長期的に「より効率的に」人や企業を助けることができる、という論にも説得力があります。しかし、「すでに行っている営利目的の金融機関がある」、「ガイドラインがあればよい」と「営利企業のほうが倫理性もやる気も高い」というのはどうでしょう。信金や信組がマイクロファイナンスを行っているというのが神話であることはすでに指摘したことですし、ガイドラインがあっても取り締まられる側に守る気がなければ絵に描いた餅になってしまいます。

やる気は高くなるかもしれませんが、どんな貸し手でも引っ張ってくるようになるとかつての新銀行東京や日本振興銀行の二の舞いになる恐れがあります。下手なノルマや報奨金は組織そのものを破壊してしまいます。また、利益が効率性を生むという議論はかつての小泉政権時代の「何でも自由化論」に似ていて私には賛成できません。となると総合的に「非営利」で行うほうが間違いが少ないということになるのでしょうか。理論的にはそうなりますが、官(中央政府)や公(地方自治体)にその気がない現状では、ただでさえ苦しい国家予算をやり繰りして、マイクロファイナンスやソーシャルレンディングのための資金枠を確保するより、営利であれ、非営利であれ、民間で新たな企業や組織を設立するほうが現実性が高いと思えます。

もちろん目下の最大の急務である「被災地と被災者の復興、救済」は別問題です。これは営利企業が赤字を出さずに行うことが難しい面もあり、官の資金を使うべきテーマです。資金は官でも運用は民という手もありますから、臨機応変に考えるとよいでしょう。火事場泥棒的な、人が困っているのにつけ込むようなビジネスモデルを許さないよう、監視する必要は充分にありますが。では、日本には大災害対応ではなく、平時に役立つマイクロファイナンスやソーシャルレンディングを行っているところはないのでしょうか。実はわずかながらあります。それを以下でご紹介します。