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イスラム金融とは何か?

一言でイスラム金融を語るのは容易ではありませんが、あえてそれを行うとすれば、「利子」のない金融ということができるでしょう。これはイスラム金融がイスラムの教えに基づいて運営されているからなのです。クルアーン(コラーンあるいはコーランをアラビア語に近い形で表現するとこうなるようです)と呼ばれるイスラムの聖典では、商人にカネを貸して利子を取ってはならない(高い利子と解釈する人もいます)としています。となると元手のない人はどうやって商売を始めたらよいのでしょう。その答えがイスラム金融です。出資者を募って、それを元手にする。その元手で商売をして、成功すれば出資者と商売を起こした人で分ける。失敗したら出資者は損をし、商売人は信用をなくす。これが単純化したイスラム金融の仕組みです。

長い間、忘れられていたこの金融が再び脚光を浴びたのはオイルショック以降の一九七〇年代だといわれます。イスラムの教えに厳格なサウジアラビアなど湾岸諸国で復興し、二○一〇年代の今日ではアラブ諸国だけでなく、イスラム教徒の人口の多いマレーシア、インドネシアやインド亜大陸などでも盛んになってきています。実は利子というものを完全肯定している宗教はないという説があります。ヨーロッパ中世において、キリスト教信者に代わって金融業を営んでいたユダヤ教徒も「高利貸し」は律法で禁じられているといわれます。高利貸しと真っ当な金貸しの線引きをどこでするかはよくわかりませんが、「ヴェニスの商人」の主人公であるシャイロックのような血も涙もない高利貸し(そうでないことは、結末で明らかですが)は、概ねフィクションの世界の住人ということになるでしょう。

ただ、リーマンショックで白日の下に晒された「強欲なバンカー(銀行家)」というものは数多存在します。リーマンショック後は、政府(つまり国民)に救済を求めたにもかかわらず、ほとぼりが冷めると、「公的資金はさっさと返済した。自分で儲けた金からボーナスを大盤振る舞いして何が悪い」とうそぶく投資銀行幹部の姿は、噴飯ものです。話を戻して、イスラム金融の由来ですが、キャラバン(隊商)という商行為がそうだといわれます。かつてイスラム商人はキャラバンを組んで陸路を行き、船団を組織して海路で交易を営みました。陸路でも海路でも盗賊、海賊、天災、戦争などの影響から逃れることはできず、最悪の場合、積荷や代金のすべてを失ってしまうことがありました。

これを商売のリスクと考えるか、神の御業と考えるかですが、イスラム商人たちはリスクシェアということを考えだしました。つまり、キャラバンが成功すれば皆でその利益を分かち合い、失敗すれば仕方がないと諦める、と。成功と失敗は確率の問題でもありますが、よいリーダーに率いられたキャラバンは失敗することが少なくなります。ゆえに人を選ぶ、ということが極めて重要になり、イスラム教の創始者はそうした優れたリーダーの一人として頭角を現しました。これは後述するベンチャーキャピタルと拠って立つ概念が似ています。

有望だと思われる事業に投資をしても失敗することがあります。ならばできるだけ多くの立ち上がったばかりのビジネスに投資して、多くが失敗しても少しだけの数の投資先が大成功するのに期待するという発想です。イスラム金融はこれほどまでに「博打」の要素はありませんが、失敗した場合、その損失は元手を出した皆で分かち合い、成功した場合も同様に皆に還元するという方式を編み出しました。実際にはもっと古い時代から各地でこうしたリスクシェアの仕組みはあったかもしれませんが、大発展したのは七世紀頃からの中近東、西アジアです。